組織内の人間関係の問題解決を図る一つのアプローチとして、「称賛を通じたコミュニケーション」が注目されています。
今回、同志社大学の太田肇教授に【学校における称賛の効果とそれを最大化させるポイント】についてお伺いしたことをまとめてみました。

教員の仕事の二面性

学校で働く教員は、一般企業や行政などで働く人と少し違った側面があります。

まず教員は専門職であり、必ずしも上司が部下よりも専門知識や経験に長けているという関係が成立しにくいのです。
例えば、国語科専門の校長先生が、理科の一般教員より理科のことをよく知っているとは限らないのです。

一方で、教員というのは子どもと対面しながら関わる「ヒューマンサービス」の従事者、つまり一種のサービス業であるという捉え方もできます。

教員の場合、この二面性(専門性×ヒューマンサービス)を持っている点を理解しておく必要があります。

称賛効果と情報の非対称性

前述の二面性があることから、称賛(承認)がもたらす効果は、教員の場合複雑であると太田先生は考えられています。

そもそも教育という専門的な仕事は、それを提供する側と受ける側の情報に差があります。
経済学ではこの差を「情報の非対称性」と呼びます。このことは教員の称賛効果にも影響を及ぼします。

たとえば、理科の教員は国語科の管理職から(ましてや専門知識を持ち合わせていない生徒や保護者から)、理科の専門性について称賛を受けたとしても、その称賛効果は限定的なものなります。

なぜなら教員は自らの専門性については、同じ知識や規範を有する専門職から認められることで「承認された」と感じることが多いからです。そのため、管理職が教員の授業について認めるときには、外部の専門家の評価を交えたり、同じ教科担当の意見を交えたフィードバックが効果的といえます。

一方で、教員の専門的な部分以外、たとえば、管理職から生徒への対応の仕方や募集活動への貢献への感謝、さらには生徒や保護者からのよい評判を受けた時、教員は、自ら実行した「ヒューマンサービス」について「承認された」と感じるということです。

このように、教員には、専門職とサービス職の異なる面があり、教育技術の向上や研究会で成果をあげる等専門性を重視する教員もいれば、保護者との信頼関係や子どもたちとの人間的な触れ合いに力を入れる教員もいます。

称賛による動機付けは、教員個々が大事にしていることを踏まえ、それぞれの部分で称賛の対象や方法が異なることに留意し、教員が多面的に認められる職場環境が必要であると感じました。